2008前期試験期間中に読んだ本まとめ

新書が読めるようになったよ!と声を、いやフォントを大にして言いたい。
新書がね、読み切ることができなかったんです今まで。あの版型が?なーんか苦手で。でも克服したよ!

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個人的メモを繋げたもので文体がごちゃごちゃです。敬称が適当です。乱筆失礼致します。
長いのでページ分けます。続きをどうぞー。

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エレンディラ (ちくま文庫)エレンディラ
私のファムファタル!本は去年買って一度挑戦して、あまりにぶっとんだ描写についていけなかったんですが、アメリカ文学の授業で「魔術的リアリズム」の意味を理解したら楽しんで読めるようになりました。夏休みにはガルシア=マルケスの他の作品も読みたいな。
映画の『エレンディラ』(1983年、原作者ガルシア=マルケスが脚本を担当)も観たけどおもしろかったです!コロンビアってあまりイメージが湧かないけど、映像だとよくわかる。砂っぽい暑さ。
去年の蜷川幸雄演出舞台版『エレンディラ』は少女娼婦エレンディラと少年ウリセスの恋愛物語が軸になってたけど、原作者の意図としてはエレンディラと祖母の物語なんですねー。原題が『無垢なエレンディラと無情な祖母の信じがたい悲惨の物語』ってなもんで。

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名画を見る眼 (岩波新書)『名画を見る目』
これは試験期間中というかもっと前からちまちま読んでます。有名西洋絵画を1点につき15ページくらい(白黒図版込み)の程よい長さで解説している本です。その絵画の技巧、描かれた状況、美術史上の潮流、画家の性格・生涯などなど。
著者の高階秀爾さんの名前は西洋美術史の資料を探していて嫌と言うほど出会いました。きっとすごい人なんだ。とても読みやすいです。

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怖い絵2『怖い絵2』
本屋で偶然出会ったファン・エイク画アルノルフィニ氏の表紙。これも↑と似て名画を1点ずつ分析して解説してる本。大きめのカラー図版付き。今年4月に出たばかり。
サロメ》の解説を探してたので丁度良いと思って買ってしまった。全話おもしろいんだけど、特に《ラス・メニーナス》には満足。矮人のマリアバルボラ(右から2番目)、この絵を見て彼女が気にならない人はいないと思う!以前この絵について調べたときは、解説書が見つからなくて、矮人とは王族の目を楽しませるために宮廷で飼われていたピエロとか奇形の人らしい…ということくらいしかわかりませんでした。その点を解説してくれて良かったです。
1巻は《わが子を喰らうサトゥルヌス》とか第一印象そのままに怖い絵が多いのに比べて、2巻の方が一見して怖いとは思わないような絵の裏話が解説されてておもしろいいかなと思いました。でも買わないけど1巻も図書館とかで借りて読んでみようとは思う。

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大奥 (第1巻) (JETS COMICS (4301))『大奥』
試験やレポートとは関係ないんだけど、資料用に借りたビデオを返しに行ったら第1巻が99円で売ってて、しかもレディースデー割引き89円で、前から読みたかったしこれは買うっきゃないでしょー!と言って買いました。いい買い物をした。
よしながふみ先生の男女逆転大奥漫画。そこまでは知ってたんだけど、どうして男女逆転に至ったかという点もちゃんと書かれてるんだね…!ゆとり世代(日本史やってない)の素人考えだけどこれはか な り時代考証がよくできてるんじゃないだろうか。歴史のリアルに忠実なんじゃなくて、知識を基礎にして独自のアイデアを盛り込んでアレンジしてある。架空の設定ゆえに厳密な時代考証に基づいてなくても批判を免れるという面はあるかも…かもしれないけど!この豊かな発想力はさすが。よしなが先生すごい。
つーか今思い出したんだけど『フラワーオブ〜』途中から読んでないな。誰か貸してください。

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写真論『写真論』
この本には一切図版がない。写真用語の基礎知識が要求される。(ブログ記事は書いてないけど)4月に写美『シュルレアリスムと写真 痙攣する美』展を見に行った経験が役に立った(かの有名なマン・レイのミシンと蝙蝠がさも展示されていた)。モホリ=ナジの名前ははつい今月のバウハウス・デッサウ展で知ったばかりだ。
この本で論じられている、普段読んでる写真雑誌なんかとは一段上の、アートを手がかりにした哲学っておもしろーいと思った。写真を探求してる人なら誰しも、被写体との距離や関係、写真を撮るという行為の意味、すぐれた写真とはいかなるものか…とか考えるでしょう?哲学するでしょう?
スーザン・ソンタグとは今年なぜか縁がある。3月にドキュメンタリー映画アニー・リーボヴィッツ レンズの向こうの人生』でアメリカを代表する売れっ子広告写真家アニーのパートナーとして描かれた彼女の名前を覚えて、そしたら今年とった授業でやたら薦められて、読んでみたらおもしろかったです。彼女と私の立ち位置は似てるかも、なんて書いたら思い上がりだろうか。

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フォト・リテラシー―報道写真と読む倫理 (中公新書)『フォト・リテラシー
自分史上初!ななめ読みに成功した本です。3時間くらいで。
私たちは報道写真に真実を期待するけど、そもそも選択の工程を重ねに重ねて私たちの目に届く写真が真実であるわけがないことを、マス・メディア写真の歴史を紐解くことで説明している。様々な今に残る写真資料を挙げながら、さらに読む倫理(リテラシー)を考えることまで論説を展開する。フランスの話が中心。
中平卓馬のエッセイを引用して異文化を撮ることの意味を論じた章は特に興味深かったです。「外国を撮ることは手軽に新奇な風景を見せるから卑怯なのだろうか?」とずっと考えていた私に、この本は答えのヒントを示してくれました。