ジエン社『大怪獣サヨナラ』

21日土曜日、他大学の(卒業生、新社会人)先輩に誘われてジエン社の演劇『大怪獣サヨナラ』@高円寺明石スタジオを観に行ってきました。
ブログに事前または事後感想を書くのと引き換えに料金が安くなる、ブロガー割引というのを適用させてもらいました。win-winな素敵サービスだと思いました。学生劇団などはどんどん導入すればいいのに!
しかしこの日記を書いているのは24日、とっくに千秋楽ということで宣伝効果は薄いと思われる。ジエン社の皆さんすみません。このエントリを読んで興味を持ってくれる人がいればいいな。またはジエン社の情報を求めて検索して来てくれた人の役に立ちますように。

あらすじは…なんていうか起承転結のある物語ではなかった。と感じられました。
公式サイトより引用してみると、


よかった。
これでもう二度とサヨナラをいう必要がない。
これでよかった。本当によかった。

「私たちのいた学校のそばには、自衛隊の臨時滑走路があって、何かがあると飛行機が爆音で飛び立つ。だから、すごくうるさい。」
生徒のいない教室で、二十歳を過ぎて高校の制服を着た人々が集まるが、何もしない。本当なら映画を撮っているはずだった。「ほんのちょっとした、短編映画」を。

怪獣が出没した。学校はあさってから避難所になるという。
窓の外を眺めれば、東京が壊滅していた。
しかし彼らにとってそれは、ほとんど関係がなかった。
というか、登場人物全員にやる気はなかった。

「飛行機の音がうるさい。私たちは、窓を開けることができない。」

14人のキャラクター達が入れ替わり立ち代わり教室に現れる。あるキャラクターとあるキャラクターは深い繋がりがあったり、または初対面だったりする。この物語の核として何か事件が起こるわけではなく、ただ連綿と場面は繋がれていく。

以下感想です。
大道具は学校の教室にとことん似せて写実的に作ってある。真面目にちゃんとしていた。ぶら下がった蛍光灯などがリアルで良い。ただ一点黒板だけが不思議に大きく、それは何のためかと言えばビデオカメラで撮影した映像を黒板をスクリーン代わりに投影するためでした。
開演前の舞台ではちょっとした挿話が展開したり、注意事項(携帯の電源切ってくださいとか)が学校放送っぽかったりしたのがいいですね。演出側にこういった余裕があると安心して期待できるよね。

大道具も小道具も普通にリアルですごいけど、新奇な感じではなく。何が面白かったかといえばストーリーが良かったです。
これは単に私が苦手としている所為なのですが、キャラクターが多くて追いかけるのがけっこう大変でした。
しかしそれぞれの個性はちゃんと生きていて、しかもみんな変!でたいへん面白かった。偏執的っつーか、歪んだまま固まってしまった性格のキャラクターが多かった。個性を生み出した脚本家も流石だけど、説得力をもたせた役者さん方の演技力も素晴らしい。
セカイ系」と言ってしまってもいいのかなー?怪獣が暴れていて世界は破滅しつつある、しかし教室の中の世界はその混乱をよそに展開される。これは私が演劇に目覚めた作品、劇団DECKCHOPの『SLAP!』(2005年7月)にちょっとだけ似ていると感じました。これは恐竜の卵が首相官邸で発見されて、内閣の大臣達にドタバタを引き起こすコメディーですけど。

ストーリーで魅せる演劇には、出来事に派手さがあり(ドラマ性)、寓意が込められている(メッセージ性)のが良いと私は基本的には考えています。そういう演劇が好きです。←うまく言葉で表現できないけど伝わるだろうか。*1
ドラマチックな背景設定、場面設定で大風呂敷広げて、まとめきれずどかーんと落として…、結局何が言いたいのか?観終わってスッキリしない演劇のなんと多いこと。後者が欠けている例としては、メッセージははっきりしていてもごく普通の人達の普通の生活という、演劇表現にするには魅力の足りないパターンもある。古典名作のリメイク、パロディ、二次創作なんてのを選べばストーリーで悩まなくてもいいかもしれないけど、その分演出で工夫しないとつまんなくなるよね。
まあそんな二点がちゃんと満たされていてすごいなと思いました。出来事の派手さと言ってしまうと少し足りなかったかも(中盤眠かった)。でも場面ごとに垣間見るキャラクターの背景に豊かなドラマ性が感じられました。
「教室と窓の外」が比喩する内と外、思春期と大人。登場人物たちはほぼ全員が弱くてちょっと壊れてる。彼らは姉妹、友達、恋人、師弟であっても心から信頼していないんだろうな。学校を卒業して歳はとっても強くなれない彼らを守るのは教室、制服。誰にサヨナラを言うのかといえば、世界。

音楽は倉橋ヨエコかな?たぶん。「学校」「大怪獣」「世界の終わり」にふさわしくノスタルジックほの悲しい。最後だけ違う歌手の歌でしたね。もしご存知の方がいたら情報いただけると嬉しいです。ちゃんと聞いてみたい!

そんな感じの、まとまりきらない感想でした。お粗末。

*1:ストーリー重視でない演劇というのもそれはそれでアリだと思います。美術に優れていたり、ストーリーは大したことないのに台詞がとんでもなく素敵だったり。